修了生インタビュー

  • 古賀 伸彦
  • 2022年6月現在
    トヨタ自動車 技術統括部長
    豊田中央研究所代表取締役CEO
    トヨタ自動車 未来創生センター長(兼職)

海図のない大海へ漕ぎだすあなたへ

2015年初旬。50歳の声が近くなり、エンジンの技術開発や法規認証分野でプレーヤーとして動き回っていた自分が、突然「統括機能長」という役割を与えられ、大いに悩み始めていた頃だった。
大海に投げ出され、自分のドメイン≒「実技」という自身の海図には載っていない海域で強い海流に流される感じといえば伝わるだろうか。
しかし今にして思えば、その大海に放り込まれたことが、これまでの海図の外に関心を寄せる、大学の教員で言えば「サバティカル」期間の始まりだったように思う。

私が東大EMPの募集要項を手に取ったのはそんな時だった。
「これまで築いてきた思考の枠組みをいったん解体する」「課題解決能力を鍛えるのではない。
課題設定能力を鍛える」という当プログラムは、いまにして思えば自分にとって最良のタイミングでの出逢いであったといっても過言ではない。

それにしてもだ。仕事そのものでも自分の海図に載っていない領域での戦略立案や組織マネージメントを抱えて月~金5日間あっても足りないところに、金・土曜の丸二日拘束、愛知から本郷キャンパスまでの通学時間、1週間7~8冊ペースの課題図書を読み込む時間、「理解する力」より「質問する力」を要求する講義のための考える時間が覆いかぶさってくるのだから、さぁ大変!課題図書も「ツルツルの壁」と称される哲学や、親しんでいたハズの工学・理学領域ですら、「自分が知っていたものから大きく進化している・・・」という驚きを与えてくれるものまでバラエティに富み、最初の1か月は喰らいつくことに必死だった記憶しかない。
しかし徐々に、「講師:教えるひと、受講生:教えられるもの」という一方向でなく、双方向性がある講義時間や、多様なバックグラウンドをもつ仲間たちとの講義中、講義後の居酒屋での延長戦すべてが、プログラムの狙いである「自分の思考の枠組み」を少しずつ壊してくれ、その大切な時間のきっかけを作ってくれる多様な本との向き合い方を変えてくれてからは、週末の東京行きは私のエネルギー源になっていった。そうなってからはレポート作成と発表会、そして修了式までの時間があっという間に過ぎ、気が付けばそこから時を重ねること7年近くになるわけである。

しかし私にとってあの半年は、誰も正解を知らない海図のない大海への向き合い方を教えてくれたかけがえのない時間であった。
進化し続ける学問という基盤に常に触れながら、仲間と上も下もなくフラットな関係を大切にすること。
それは単に組織をマネージメントするための心構えでなく、「生きる」という大海を超える冒険のための心構えの一つなんだろう。

海図のない大海へ漕ぎだすあなたへ。
東大EMPの門を叩いてほしい。きっとあなたにとってかけがえのない「なにか」を掴むひとつのきっかけになるはずだから。


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